腹腔鏡手術とは?

腹腔鏡手術とはどんなものか説明いたします。

人間の胴体の中には大きな空間があり、横隔膜から上半分が「胸腔(きょうくう・きょうこう)」、下半分を「腹腔(ふくくう・ふくこう)」という構造になっています。

胸腔内の重要臓器としては、肺、心臓などがあります。

一方、腹腔内には胃、小腸、大腸といった消化管、肝臓、膵臓といった消化器官、さらに女性の場合、子宮、卵巣があります。

腎臓、副腎、膀胱などは胴体下半分の領域にありますが、腹腔全体を覆っている「腹膜」という臓器の外側にあり「腹膜外臓器」として区別されています。

この腹腔内に到達するには、当然どこかを切開しないかぎり到達できません。一般的に、腹腔内臓器に触るためにはお腹を切って到達するしかありません。

内視鏡手術の範疇に入るので、胃カメラのようなものと誤解される方もいらっしゃいますが、胃カメラや大腸カメラは、消化管の中を見る内視鏡ですから、口や肛門といった「もともと解放されている出入り口」から挿入するため、切開は必要ありません。しかし、腹腔鏡や胸腔鏡の場合、どうしてもどこかに創をあける以外に内腔に到達する方法がありません。

また、局所麻酔、脊髄麻酔などの部分麻酔や日帰りの1~2時間で可能と誤解されている方もいらっしゃいますが、全く違います。腹腔内臓器に触れるため、全身麻酔で行う必要があり、また、視野確保の点から、気腹(炭酸ガスを腹腔内に入れて腹腔を膨らます)を行うため、筋弛緩薬投与が必須で、呼吸を止めて人工呼吸をしなくてはならないため、全身麻酔が絶対に必要になります。

よって、入院管理、さらには麻酔専門医師による管理が必要となるため、原則的は大規模な病院でないと手術ができません。

殆どの施設で、手術前日の入院、術後3~5日程度で退院としていると思います。

大きく切開して腹腔内に到達する場合は「開腹手術」になり、小さな創から内視鏡や鉗子を挿入する場合に「腹腔鏡手術」という呼称になります。

ですから、「開腹手術の方が大変で腹腔鏡は簡単な手術」という印象も全く間違っています。腹腔鏡手術は、「開腹手術を内視鏡手術に置き換えたもの」ですから、基本的操作は開腹手術と全く同等であり、症例によっては腹腔鏡手術の方が大変な手術になる、ということもあるのです。

腹腔鏡手術の創をどこに設定するかは、手術目的の臓器や施設の考え方、術者の考え方によって変わります。

内出院長が大森赤十字病院で行っている方法は、患者さんの右側に術者、助手が反対側、創は臍から内視鏡を入れ、右に2箇所、左1箇所の鉗子操作用の創をおいて行う「右パラレル法」です。

腹腔鏡手術 創の場所

腹腔鏡手術での創の場所

お臍の中を縦に1cmほどの切開ですので、術後の創部はほとんど確認出来なくなります。左右5mmの創については、多少見えることがありますが、時間経過とともに確認出来なくなることが殆どです。右下の12mm創も、術直後こそはっきりと見えますが、皮膚のシワと同じ方向に切開しているので、術後は目立たなくなってきます。

この左右と右下に入っている3本の鉗子を使って手術を行います(臍に入っているのは内視鏡なので目のかわりです)。気腹によって膨らんだ腹腔内全体が臍からの内視鏡で十分見えること、これらの鉗子が十分に動いて手術操作ができること、これが腹腔鏡手術をできるかどうかの判断になります。

ですから、かなり大きな腫瘍がお腹のなかにある場合は、腹腔鏡手術を施行できないことがあります。ただし、大きさだけで簡単に適応の可否を決定するものでもありません。術前の画像検査(超音波検査、MRI、CT)その他で判断いたします。

日本の医療保険にて適応のある婦人科腹腔鏡手術は、

子宮全摘(子宮筋腫、子宮腺筋症)、子宮筋腫核出、卵巣腫瘍(卵巣成熟奇形腫[類皮嚢腫、デルモイドと呼ばれることもあります]、チョコレートのう胞[子宮内膜症性のう胞]、漿液性のう胞、粘液性のう胞、卵巣線維腫など)の卵巣摘出またはのう胞摘出、子宮体がん(手術可能施設は限られています)、子宮脱(骨盤臓器脱)

となっています。

開腹手術しか選択肢が呈示されなかった方は、当院に相談(セカンドオピニオン)してみて下さい。腹腔鏡手術可能であることもあります。