ピルについて(避妊)

ピルについて

まず最初に、ピルを使うと、その後妊娠しにくくなる、という都市伝説のような迷信のようなものがあるようですが、全くのデタラメです。そんなことは決してありません。

むしろ、卵巣にも子宮内膜にも保護的に作用します。すぐに妊娠の必要はない、という方は積極的に使用して頂きたいと思います。ピルの内服は、女性が社会生活をする上で、かなり有利に働くと考えています。

ピル服用中は、ほぼ100%妊娠することはありませんので、不用意に妊娠してしまう、ということを回避できます。これが一番大きいメリットです。

あとで述べますが、月経が来る時期をコントロール可能になるので、予定をたてやすくなります。

ムダな排卵をしなくなるので、年齢があがってから妊娠を希望したときにも、卵巣機能廃絶という観点からは若干有利になります(ここは、すこし誤解をまねいてしまうかもしれません。ピルを長期間飲んでいれば、高齢になっても妊娠が可能になる、という意味ではありません)。

卵巣がんについては、ピルの使用をしていた方で、発症リスクが低下するというデータがあります。

子宮体がんも同様に、発症リスクが低下する、というデータがあります。

ピルとは、エストロゲンという女性ホルモンとプロゲステロンという女性ホルモンの合剤です。

エストロゲンもプロゲステロンも両方共に卵巣から分泌される女性ホルモンです。

月経周期の1日目から14日目にかけて、卵巣の中で卵胞という組織が発育します。14日目ころには2cm程度まで大きくなり、排卵します。排卵した後に、卵胞は黄体というものに変化します。卵胞は妊娠が成立しないと、14日間で寿命を迎え(月経周期の28日目)、退縮します。

卵胞からエストロゲンが分泌されます。エストロゲンは、子宮の内側にある子宮内膜を刺激し、細胞分裂を盛んにして増殖させます(増殖期)。

排卵後、黄体からエストロゲンと同時にプロゲステロンが分泌され、増殖した子宮内膜を維持安定させ、グリコーゲン分泌を盛んにし、着床の準備をします(分泌期)。

妊娠が成立していないと、この黄体が退縮するとともに、エストロゲンもプロゲステロンも分泌されなくなり、子宮内膜を維持することができなくなり、子宮からはがれおちます。

これが月経(生理)という現象です。プロゲステロンがなくなることで出血するので、我々は「消退出血」とも呼びます。

ピルはエストロゲンとプロゲステロンの合剤ですから、簡単に言えば、服用することで排卵後の子宮内膜の状態を作り出すことになります。ピルを間断なく飲み続ければ、ずっと月経を停止させておくことができます。これは、妊娠に似た状態なので、このような治療を行う事を「偽妊娠療法」といいます。

一般的なピルの飲み方は、ある一定期間服用することで子宮内膜を排卵後に近い状態にし、服薬をやめる、もしくは偽薬を服用することで体内のエストロゲン・プロゲステロンの濃度を低下させ、消退出血を起こさせます。

月経をずらしたい、というときには、この消退出血をおこす時期を調整することでずらすのです。

ですから、何ヶ月もピルを服用することで、月経を停止させることも可能です(妊娠は、エストロゲンとプロゲステロンの高い状態が10ヶ月持続する状態です)。当然、毎月出血させることもできますし、3ヶ月ごとに月経を来させる、ということも可能なのです。

長期間月経を停止させていても、特別な問題は起こりません。服薬を止めれば、また元通りに排卵、月経のサイクルが戻るだけです。

外からエストロゲンを投与することで、体としては、すでに体内にエストロゲンがあるので、排卵しなくても良いだろう=卵胞を発育させなくても良いだろうと考えることによって排卵を停止させます。

ピルの避妊効果は、この排卵の抑制作用、子宮内膜の増殖抑制と強制的な剥離によるものと考えられています。

正しく服用していれば、ピルによる避妊効果はほぼ100%、と言われています。

また、自分で出すエストロゲンよりも、ピル服用によるエストロゲンの方が濃度が低いので、当然、子宮内膜の増殖も少なくなります。少ない量が子宮から押し出されるので、生理痛が軽くなるのです。いまは、月経困難症(生理痛)治療を目的に作られた低用量ピルもあります。

ホルモン状態がほぼ一定となるので、ホルモンによる感情起伏も抑えられます。月経前緊張症の方に、低用量ピルを使用すると、症状が改善することも多くあります。

ピル内服中は調子が良いのに、月経が来るだけで体調が悪くなってしまう、という方の場合には、先ほど述べた長期間の月経停止を行う事で、体調を整えるという方法もあります。

ピルによる副作用として、最も怖いものが血栓塞栓症があります。血管内で血液が固まり、それが重要臓器で起これば、重篤な状態になる、というものです。エストロゲンの副作用として、血液を固まらせる性質を促進してしまうということがあるのです。ふくらはぎがつる、痛い、触っただけでも痛い、といった症状がある場合には、これを疑います。ピルを使用していない人で発生する確率が1/10万人に対して、ピル服用で7~8/10万人になると言われていますが、妊娠状態ですと、30/10万人と言われています。一方で、連続して3ヶ月以上正しく服薬した場合、発症リスクは、ピルを飲んでいない人と同レベルまでさがるとも言われているので、過度に心配する必要もないと考えています。

しかし、脳梗塞、心筋梗塞などの血栓性疾患が既往にある方は使えませんし、エストロゲン依存性腫瘍である乳がんの既往のある方にも投与不可能です。また、喫煙されている方はもともと血液が濃いので、血栓ができやすいと言われており、とくに35歳以上の喫煙者では投与できないことになっています。その他、前兆を伴う片頭痛をお持ちの方にも使用できないことになっています。

他の副作用として、長期間の服薬で肝機能障害を起こすことがまれにあります。ただし、これは、どの薬剤でも起こり得るものです。

当院では、かならずピル使用中の方には、肝機能と血液が固まっていないかの検査を定期的におこないます。

他には、服薬はじめに気持ち悪くなるというものがありますが、これは慣れることが殆どですが、まったくダメな場合には、製剤を変えていくことがあります。

不正性器出血を伴う場合も、使用するピルのエストロゲン濃度が足りないこともあり、あえて中用量ピルを使うこともあります。

ピルを使用すると太る、という方もいらっしゃいますが、殆どの場合、食欲が増える事による二次的なものです。ご自身で食べている量を気をつけて頂ければ、おそらく回避できます。一部の方に、プロゲステロンの副作用によるむくみ=体内への水貯留が原因で体重増加するかたも居ますが、これも服薬を止めれば速やかに戻ります。